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地域で守り受け継がれてきた伝統。大久保地区のしめ縄づくり

「移住定住コンシェルジュ(柳井市)」サポーターの垂井です。
地域の元気人をご紹介!ということで、柳井市大畠(おおばたけ)の大久保地区に住む中元さんと村本さんにインタビュー。お二人の仕事や、地域に根付く伝統行事についてお話をうかがいました。お正月の恒例行事・しめ縄づくりで使う藁の加工も体験させていただいたので、その様子もレポートします!

地域とともに仕事を営む

古くから漁師町として栄えた大畠地区。そんな大畠地区の山あいに、大久保という集落があります。
山道をぐんぐん進むと広がる段々畑の風景。耕作放棄地になっている場所もありますが、よく見ると石垣の跡が見え、昔はたくさんの方が田畑を営んでいたことがうかがえます。

山道の途中でヤギを発見!

中元さんは、結婚を機に大久保地区に移住。1~2年間は旦那さんと一緒にみかん農家をされていたそう。「でも、みかんの価格暴落の時期と重なって、これ以上みかん農家を続けることができなくなってしまって」と当時を振り返る中元さん。
そこで新しく始めたのが、ライスセンターでした。
大久保地区にはお米農家が多く、中元さんも最初は周りの人に教えてもらいながら稲作に励みました。そして、お米を作るだけではなく、周りの農家さんが収穫したお米を集約して出荷するライスセンターも営むことに。地域の人が作れなくなった土地で、代わりにお米の栽培も行うなど、地域全体のことを考えて仕事を営んできました。
また、ライスセンターのかたわら土木建築業も営んできた中元さん。倉庫を見せてもらうと、二人で始めたとは思えないほど大きな建物の中に、たくさんの機械が所狭しと置いてありました。ただ、後継ぎが見つからず、土木建築業はたたむことに決めたとのことでした。
穏やかな話しぶりの一方、机に置かれた手に目をやるとそこにはたくましい手が。走り続けてきた中元さんの半生が凝縮されているかのようでした。

中元さんとともにお話をうかがったのは、花き農家の村本さん。
最初は趣味でお花を育てているだけだったそうですが、周りの人から「直売所でも販売してみたら?」と声をかけられ、定期的に直売所で販売するようになりました。そんな中、村本さんのお花は地域の人に人気だったこともあり、「やまぐちフラワーランドにも出荷してみない?」と声がかかります。そこから話が進み、今では季節に合わせてたくさんのお花をフラワーランドに出荷しています。
繁忙期は大久保地区のお仲間に手伝ってもらいながら準備を進めるとのこと。出荷準備の中のビニールハウスの中には、カラフルでたくさんの種類の花苗が並んでいました!


色とりどりのお花がずらり。地域のお仲間と作業を進めます

種まきの時期や鉢替えの時期などに間に合うことがとても大事だそうで、花の様子をよく観察しながら、そのタイミングを逃さないように栽培しているそうです。皆さんで話に花を咲かせつつ、楽しそうに作業されている様子が印象的でした。

そんな中元さんと村本さんは、大久保地区での生活がとても気に入っているそうです。「田舎での生活は何かが起こっても誰かが助けてくれるという安心感があるのがいいですね」と口をそろえてお話しされていました。
ちょうどインタビューを始めるとき、近所の方が「そこで育てよるシイタケ、採っていってええよ」と声をかける場面に遭遇。地域に根付く支え合いの習慣を目の当たりにした瞬間でした。

中元さんのリーダーシップで住民が自然と集まる

地域の行事が盛んな大久保地区。昔に比べたら頻度は減ってきているとのことですが、春は枝豆の種まき、夏は玉ねぎの苗づくり、冬はお正月の準備で盛り上がります。

中元さんの旦那さんは地域をとりまとめる長として、地域の方から厚い信頼を寄せられています。
「地域がまとまっているのは中元さんのおかげ。中元さんがいるから、みんながついていくんですよ」と村本さん。
中元さんご夫妻が「やるよ!」と号令をかけると地域のみんなが自然と集まってくるとのこと。
そんな、信頼が厚い中元さんご夫妻を軸に行われる共同作業が、皆さんにとって憩いの時間になっているのだと感じました。

地域行事への思いをうかがうと、「前の人たちがやってきたことを受け継いでいく。そうすることで、自然と次の世代に文化が流れていく。そういう流れを大事にして地域行事を行っています」と中元さん。
流れを途切れさせず、次の世代に受け継いでいく。先人たちの思いを継承していく。その優しい口調に、中元さんの強い思いをひしひしと感じました。

昔ながらの農機具を使ってしめ縄づくり

インタビューした日は、ちょうどお正月に向けてのしめ縄づくりの準備のために、地域の方が集まる日でした。その様子を見学させていただくことに。
男性は門松に使う竹を切りに出発。女性は藁の加工に取り組み始めたところでした。用意されたのは足踏み式餅つき機「台唐(だいがら)」。中国から渡来した農具だそうで、江戸時代初め頃から日本でよく使われるようになったそう。長い柄の片側の端を踏むと簡単に杵が上下に動くので、子どもでも簡単に餅がつけたのだとか。大久保地区では、この餅つき用の農具を使って、しめ縄を編みやすいよう、藁を柔らかくしていきます。地域の人たちの知恵ですね!

台に上がり、てこの原理で長い柄を動かします

見ていたらすごく楽しそうでやりたくなってしまいました。そんな私の様子を察して、「やってみんさい」と声をかけてくれた地域の方々。柄の先では地域の方が藁の向きを変えてくれ、板を踏んで藁をたたいていきます。リズムを合わせて足を動かすこの作業、すごく楽しい!藁を踏んだ時の音がとってもいいんです。だんだん調子が出てきて地域の方とのリズムが合ってきてうれしい!どんどんテンションが上がっていきます!大満足で作業を終えました(笑)。

続いて、穀物を歯と歯の隙間に挟んで引いて脱穀する農具「千歯扱き(せんばこき)」も使わせていただきました。やわらかくなった藁を、さらにまっすぐにしてごみを落としていきます。葉があるところにバンバンとたたきつけ、いらないゴミや短い藁などを落としていきます。そうすると、まっすぐで美しい、やわらかな藁が完成しました。

千歯扱きで柔らかくきれいな藁に仕上げます

ちょうどその時、竹を刈ってきた男性陣が到着。軽トラにぎりぎり乗るくらいの長い竹がいっぱいです!

作業が空いた時間はたき火の周りに集まって、お菓子やお茶を楽しみながら談笑タイム。
作業を通じてなごやかな時間をみんなで共有することが、地域の結びつきをより強いものにしているのだと感じました。

稲作が盛んだからこその伝統文化を次世代につなげるために

中元さんご夫妻が中心となり、たくさんの地域の方が関わって行われてきた伝統行事。
「ただ、新しく集落に入ってくる若者がいないんです」「いつまで継続できるか・・・」と不安な気持ちも口にされていました。

昔ながらの農機具を使ってのしめ縄づくり。お米農家が多いからこそ手に入る良質な藁。それらを使って、みんなで和気あいあいと作るしめ縄。そこから始まる新年。
実際にお二人の話を聞き、しめ縄づくりを体験する中で、伝統行事を通して自然のものに触れながら、地域の方との憩いの時間を楽しむ。それ自体がとても貴重な文化だと感しました。

地域に根差し、受け継がれてきた伝統。何気ない営みの中にも、地域で長年育まれてきたものがあります。
皆さんも、おためし移住で地域の方にお話を聞いたり行事に参加したりして、地域の暮らしを体感してみませんか。
人との出会いが、新たな一歩につながるかもしれません。

お話を聞いた、中元さん(右)と村本さん(左)

==================================本記事は2024年12月取材時の情報になります。おためし移住や移住ツアーのご相談は下記窓口までお気軽にお問合せください。